ブレンディッド・ラーニング成功のカギ。成果につながる効果測定とは?

企業研修を実施したり、そこに参加したりしたとき、「この内容でよかったのかわからない」「効果があるのかわからない」と感じたことはありませんか。
効果測定」は、前回ご紹介した「ブレンディッド・ラーニング」の成功のカギであり、さまざまなやり方が研究されています。
▼前回の記事はこちら
ブレンディッド・ラーニングとは? 社内研修で抜群の成果をあげる最先端の学び方

今回は、ブレンディッド・ラーニングにおける研修の効果測定のやり方、そして成果が出て効果測定しやすい研修設計についてご紹介します。
これらを取り入れることで研修の効果がわかれば、よりよい研修の設計につながります。

 

この記事を読んで得られること

・ブレンディッド・ラーニングにおける成功の定義
・成果が出て効果測定しやすい研修設計の方法
・研修の効果測定方法

 

目次

ブレンディッド・ラーニングにおける「成功」とは
研修の効果測定が難しい要因
研修の効果測定の方法 学習の効果を評価する「4段階評価モデル」
成果が出て効果測定しやすい研修は「逆算」で設計
研修の効果がわかるアンケート調査とは

 

ブレンディッド・ラーニングにおける「成功」とは

まず、ブレンディッド・ラーニングの考え方をもとに、企業内研修における「成功」の定義を考えます。
ブレンディッド・ラーニングは、「パフォーマンスの向上」を目指しています。 

企業は研修を通じて、従業員に投資しています。それが社員の成長を促し、組織のパフォーマンスを向上させて業務上の成果を上げ、企業の競争優位を実現できれば、研修は成功と言えるでしょう。

従来の研修は知識やノウハウを提供する「インフォメーション型」でした。しかし、これからの学習は「パフォーマンス型」。生産性やエンゲージメントを高める必要があります。
研修の効果測定には、研修の評価・改善、職場実践の促進や学習強化などのメリットもあると考えられています。
 

研修の効果測定が難しい要因

メリットの多い研修の効果測定ですが、実際にはあまり行われていません。その実施が難しい要因は、次のことです。

・業務におけるパフォーマンスや成果は、社内外の環境変化や業務内容など、さまざまな要素に左右される(直接的に研修の影響があったと説明することが困難)
・学習してから成果が出るまでに一定の期間を要する
・抱える課題は人によってまちまちであり、成果を上げるためには、その人に本当に合った学習設計が必要

一方で企業研修においては、限られた予算で最大の効果を得ること、つまり生産性向上が、各社にとって大きなテーマです。

では、どのように研修の効果測定を行えばいいのでしょうか。 

 

研修の効果測定の方法 学習の効果を評価する「4段階評価モデル」

一つの方法が、アメリカの経営学者ドナルド・カークパトリックが1959年に提唱した「4段階評価モデル」です。
教育の評価法として知られているもので、対象に応じて、評価を4つの段階に分けています。

レベル1:反応 研修に対する学習者の満足度
【測定方法】研修アンケート、アクションプランなどの課題提出

レベル2:学び(理解度) 学習者の学習到達度
【測定方法】筆記試験、レポート提出、討議などのアウトプット

レベル3:行動 学習者の行動変容
【測定方法】チェックリスト、インタビュー、事後アンケート

レベル4:成果 学習者や職場における成果
【測定方法】量的・質的データの活用など

 

「4段階評価モデル」はその後改良が加えられ、カークパトリックやアメリカの経済学者ジャック・フィリップスなどによって議論が重ねられました。それらを整理すると、評価を6つの段階に分けられます。

「6段階評価モデル」の詳細は、小仁聡『ブレンディッド・ラーニング~新リモート時代の人材育成学』(フローラル出版、2021)をご参照ください。

 

成果が出て効果測定しやすい研修は「逆算」で設計

学習成果につながり、効果測定がしやすい研修は、どのような手順で設計するとよいのでしょうか。

いきなり学習コース設計から着手すると、効果測定が曖昧になります。
「4段階評価モデル」を参照しつつ、研修のゴール(目標、目的)から逆算して設計することで、有効な効果測定が可能になります。具体的には、次のような手順です。

1.ビジネスインパクトを定義する
目標となるビジネスインパクトを、定量、定性の両面から定義します。
ゴールイメージをしっかり持つことで、学習設計の土台ができあがります。

2.ビジネスインパクトを実現するための戦略を立てる、戦略実行につながる測定指標(KPI)へとブレイクダウンする
次に、定義したビジネスインパクトを実現するための戦略や施策を定め、それらを計測可能な指標に落としこみます

3.測定指標(KPI)につながる「マインド」や「行動(能力開発課題)」を言語化する
立案した戦略や施策を達成する上で必要な「マインド」や「行動」を、言語化することで明確にします

4.狙った「マインドの醸成」・「行動変容(スキルの習得)」を目的とした学習コースを設計する
ここでようやく学習コースの設計に入ります。

以上の手順を踏んだコース設計を、ある営業研修を例にしてご紹介しましょう。

1 目標とするビジネスインパクト……受注件数増加による売上増
2 目標達成のための戦略実現につながるKPI……新規での大型案件の提案件数が増加する
3 KPI向上につながるマインド・行動……顧客の要望通りに提案するのではなく、潜在ニーズを深掘りし、大型企画を提案できるようになる
4 マインド醸成・行動変容につながる学習……商談におけるヒアリング力の強化(例:SPIN話法)

 

研修の効果がわかるアンケート調査とは

「4段階評価モデル」の指標を全て正確に計測し、学習との相関性を見出すのは難しいのが実情です。 
実行しやすい効果測定として、アンケートを用いて学習者の反応や行動を見る方法をご紹介しましょう。
特に、「4段階評価モデル」におけるレベル1とレベル3の効果測定に、アンケートやインタビューなどの調査が役立ちます。

レベル1の調査は、研修直後に職場で実施・活用する視点から整理します。
「目標に対する進展」「職場活用イメージ・具体的な計画の策定」「実践する際の障害・改善点の把握」など、レベル3に結びつける視点で設問を作成します。
ポイントは、研修の冒頭に受講者に設問を見せ、意識させておくことです。

レベル1の設問の具体例を見てみましょう。
 

職場活用イメージ・具体的な計画の策定

「このプログラムの成果として学んだスキルを実践できますか?」
「本日学んだことを、いつ、どこで、誰に使いますか?」
「本日学んだことがどの場面で使えそうか、思いつく限りたくさん挙げてください」

レベル3の調査は、研修の3~6か月後に行うものです。
「行動計画の達成度」「成功・失敗のエピソード」「研修内容を踏まえて得られた成果」といった視点で、マインドや行動の変化と研修の因果関係を探ります。
レベル1で記入した内容を振り返りながら回答してもらうのがポイントです。

レベル3の設問の具体例は以下のようになります。
 

行動計画の達成度

「研修後に立てた行動計画は何パーセント達成できましたか?」
「その数値の内訳をお書きください」
「この研修のテーマである○○について、研修前と比較して、具体的にどのようなことができるようになりましたか?」

他の効果測定方法として、「サクセスケース・メソッド」もあります。これは、学習者の中で最も成果を上げた人と上げられなかった人を特定し、インタビューを行うものです。

このように、研修の設計を見直し、正しく効果測定を行うことで、あなたの会社の研修も検証、改善ができます。
その結果、学びによる競争優位の実現につながります。
それにはブレンディッド・ラーニングの考え方が外せません。

 

▼次回の記事にて、研修設計に活用できるテクノロジーについてご紹介しておりますので、
是非併せてご覧くださいませ!

ブレンディッド・ラーニング 研修設計に活用できるテクノロジーとは

 

効果につながる学習設計手法「パフォーマンスラーニング」についてご紹介している記事もございますので、ご参照ください
▼【UMU活用レベル4】パフォーマンスラーニングプログラムの提供

【UMU活用レベル4】パフォーマンスラーニングプログラムの提供

 

▼参考文献
小仁 聡『ブレンディッド・ラーニング〜新リモート時代の人材育成学』(フローラル出版、2021)
▼書籍を詳しく知りたい方はこちら

http://umujapan.co.jp.bkhosting.work/column/book-blended-learning/


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