コンテンツの揃え方で効果が変わる「ブレンディッド・ラーニング」
ブレンディッド・ラーニングにおいてパフォーマンス向上の軸となるラーニング理論「TPACK」の三つの要素「テクノロジー」「コンテンツ」「教育学」のうち、今回は「コンテンツ」を取り上げます。
研修担当の方の中には、コンテンツ作成が大変だと感じている方も多いでしょう。
ブレンディッド・ラーニングにおけるコンテンツの考え方を知ることで、より効果的なコンテンツになると同時に、ラインナップを揃える苦労も減るはずです。
▼前回までの記事はこちら
1.ブレンディッド・ラーニングとは? 社内研修で抜群の成果をあげる最先端の学び方
2.ブレンディッド・ラーニング成功のカギ。成果につながる効果測定とは?
3.ブレンディッド・ラーニング 研修設計に活用できるテクノロジーとは
この記事を読んで得られること
・ブレンディッド・ラーニングにおけるコンテンツの考え方
・効果的なコンテンツの提供方法
・幅広い候補の中からのコンテンツの集め方
ブレンディッドラーニングにおけるコンテンツとは?
ブレンディッド・ラーニングにおけるコンテンツとは「成果を出すために必要な学習要素」のことです。
学習内容に関する知識という意味では、コンテンツの作成方法、また撮影や動画編集など、コンテンツを用意するための技術やテクニックを含みます。
良質なコンテンツを用意するための3つのキーワード
コンテンツに関して、学習効果を最大化させるための3つのキーワードをご紹介しましょう。
1マイクロラーニング(コンテンツの細分化)
2フォーマル・ラーニングとインフォーマル・ラーニング(研修と日々の学び)
3キュレーション(収集、選別、編集)
これらを詳しく見ていきます。
キーワード① 小分け学習で効果を高める「マイクロラーニング」
マイクロラーニングとは、コンテンツを5〜10分ほどの小さなサイズにすることで、多様な組み合わせを可能にし、よりパーソナライズされたコースを設計する考え方です。
過去の研究結果では、コンテンツを細分化して学習した人のほうが、同じ内容をまとめて見た人より、深く理解できていました。
細分化した方が、学習者の認知システムに負荷をかけにくいのです。
コンテンツの種類と形式は、主に次のとおりです。
・インプット
動画、音声スライド、文章、生放送など
・アウトプット(練習)
アンケート、動画課題、ディスカッションなど
・エバリュエーション(評価)
試験、学習内容に合わせた評価コンテンツなど
それでは、コンテンツ作成のポイントを見ていきましょう。
1)テーマを最小単位まで細分化する
2)複数のチャネルを使う
「視覚・画像」と「聴覚・言語」という、複数のチャネルを使った方が早く、多くの情報を処理できます。また学習者が情報を選択・整理することで、能動的な学習が促されます。
3)パーソナライズされた内容と丁寧なガイド
学習者の集中力を切らさないよう、次に取り組むコンテンツに誘導するなどして意欲を高めます。
4)受講者を巻き込む設計
Q&A、クイズ、課題提出など、積極的に学びたくなる要素を含めます。
キーワード② フォーマル・ラーニングとインフォーマル・ラーニング
企業の学習コンテンツにおいて、「フォーマル・ラーニング(公式の学習)」とは、研修を中心とした公式の学習のことです。
そして「インフォーマル・ラーニング(非公式の学習)」とは、自己学習を含む幅広い学習のことです。同僚と意見交換して刺激を受ける、先輩や上司の行動を観察して真似する、本やインターネット上の情報から気づきを得るなどがその例です。
ここで、アメリカの調査機関ロミンガー社の調査結果から明らかになった「70:20:10の法則」をご紹介しましょう。
これは、成果に結びつく学びのうち、70%は日々の仕事現場での経験で培われ、20%は仕事 における他者との関わりによってもたらされており、残りの10%が、企業が提供する研修などによるとしたものです。
つまり、職場での学習機会の90%はインフォーマル・ラーニングによるものなのです。
企業内の学びは、「フォーマル・ラーニング+インフォーマル・ラーニング」という観点から考えることが成果につながります。
フォーマル・ラーニングは「ジャーニー」として設計
フォーマル・ラーニングにおいて重要なのは、研修をイベントとして終わらせず、仕事で成果を出すことを目的とした「パフォーマンス・ラーニング」を意識すること。
つまり、学びを定着させ仕事で発揮できるまでを「ジャーニー(旅)」として設計することです。
インフォーマル・ラーニングを促す環境を整備
インフォーマル・ラーニングは、学習者が生活や仕事の中で日常的に触れる情報やシーンにおける学習です。
これを充実させるための企業のアプローチとして、以下が考えられます。
・現場の経験・考察とベストプラクティスの抽出
現場経験を動画インタビューなどで共有し、成功や失敗から学べるようにします。
・仲間との共有・ディスカッション
専門知識やポケットノウハウを共有し、オンラインで随時ディスカッション、交流ができる「学び合い」の場を提供します。
・ジャストインタイム学習
その時の課題や興味に沿った、旬な学びを得られやすい環境を用意します。
・専門的な知見・さまざまなレベルの情報
社内外の専門家と協力して、最新情報、より高度な情報などに触れられるようにします。
このように、さまざまな環境を整えて社員の自発的な学びを促進させることが重要です。
ラーニングサークルでインフォーマル・ラーニングを支援
UMUの機能「ラーニングサークル」は、誰でも自由に参加・発信できる「学びのオンラインコミュニティ」です。
参加者は、サークルのテーマに沿った情報や学習についてシェア・コメントします。
また、グループを作成して、メンバー同士の知識や考えを深め合うこともできます。
ラーニングサークルは、インフォーマル・ラーニングを支えるものです。
社内の暗黙知をデータ化し、組織の知見として蓄積できます。また、社員同士のコミュニケーションなどで偶発していたインフォーマルな学びを、データ化してAIと組み合わせることで、より組織的・科学的に支援できるのです。
これによって、職場を中心とした学びの文化がより力強く醸成され、組織の競争優位の確立にもつながります。
キーワード③ コンテンツをつくらず、既にあるものから選ぶ「キュレーション」
キュレーションとは、さまざまな情報を特定の視点から収集、選別、編集することで、新しい価値を創造する活動です。
研修のコンテンツを揃える上で、鍵となるのがキュレーションです。
すべて自分たちで作成する必要はありません。良質なコンテンツをブレンドして、その時点で最も効果的な学びを提供する視点が大切です。
キュレーションできるコンテンツの例を挙げます。
・すでに社内にある各種ナレッジ
動画素材、資料ファイル、創業者インタビューなど。
・自社開発のもの
難しく考える必要はありません。たとえば、現場社員のノウハウをインタビューして撮影する方法があります。
撮影は外部委託するほか、スマートフォンなどを使い、社内で簡易的に撮影・編集することも可能です。
・世の中に提供されているコンテンツ
インターネット上のもの、新聞や専門誌の記事など。
・研修会社が開発した、eラーニングなどのコンテンツ動画
研修担当者がすべてのコンテンツを集めるのではなく、その分野に詳しい人に聞くことで、スピーディーに効率よく集めることができます。
今回はコンテンツの揃え方について、三つのキーワードからご紹介しました。
コンテンツを全て自分たちで作らなくても、既にあるものを活用できます。作成する場合も、簡易的な手法が使え、長尺は必要ありません。
最初から完璧に揃えようとするのではなく、スピーディーに作成し、フィードバックを元に改善することが重要です。
過去の記事も是非あわせてご覧くださいませ!
▼前回までの記事はこちら
1.ブレンディッド・ラーニングとは? 社内研修で抜群の成果をあげる最先端の学び方
2.ブレンディッド・ラーニング成功のカギ。成果につながる効果測定とは?
3.ブレンディッド・ラーニング 研修設計に活用できるテクノロジーとは
参考文献
小仁 聡『ブレンディッド・ラーニング〜新リモート時代の人材育成学』(フローラル出版、2021)
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