【UMU会長コラム】コロナ時代の学び変革①
本日はユームテクノロジージャパン株式会社の会長 浦山昌志より、「コロナ時代の学び変革」に関するメッセージをご紹介いたします。
コロナ時代の学び変革
この数ヶ月、私たちは目に見えないウイルスの恐怖に、混乱と失望の淵に立たされている。コロナ危機はどこまで続くのだろう? 過去に人類を悩ましてきた多くのウイルスとの戦いから考えれば、ワクチンや薬が開発までの期間を考えると、今後も継続してこのような状況を乗り切らなければならないのは明らかである。
この危機、歴史上の大きなパンデミックから私たちは何を学ぶのだろう?
全世界で、働き方や価値観の大きな変化を、すべての人類が肌で感じているはずである。
リモートワーク、オンラインラーニングがニューノーマルになった。
今まで、対面でないと研修はできないと言われていた類のものは、中止になったり、何とかオンラインでできないかという動きを多くの人が体験しているはずである。
研修講師はこれから1年は仕事がないとさえ予言するひともいる。
働き方では、私自身もハンコを押すために出社しなければならないことが起こっている。過去それを改善したいと思っても、ハンコを重視する顧客もいるため仕方ないと、二の次にしてきた。弊社は、リモートワークに移行するためオンライン決済の電子ハンコを申し込んでいるが、1ヶ月経っても全く開通しない。導入したい企業が列をなしているのだろう。
私は、学び方改革は、働き方改革に通じるとコロナ禍の前から主張し続けてきたが、今やますますその意味が深くなってきていると思う。
私たちは、今や学び方、働き方を変える必要があることを強く動機付けされているのだと思う。
この危機に示唆される新しい価値観、問いは以下のようなことである。
・経済優先ではなく、持続可能な人類繁栄、平和をどう作り出すか?
・国、民族、地域優先ではなく、全体最適な健全性をどうハーモナイズするか?
・売り上げ、利益優先ではなく、働く人と顧客の成長、幸せ、相互の関係強化をどう行うか?
・自己の差別化と他への勝利優先ではなく、周囲への貢献関与をいかに広げるか?
・自己の知恵で人々を煽るのではなく、いかに集合の知恵を人々と生み出すか?
・何時間働いたかではなく、どれだけの価値を生み出したか?
・何人の部下がいるかではなく、どれだけの人たちに影響を与えたか?
・ストレスとの戦いの中で、いかに心の安心・安全を確保する個人、社会の形成をどうするか?
・どれだけ学んだかではなく、何を悟り、どう行動を変え、どう周りを変えたか?
・何を教えるか、学ばせるのか、その方法は何かだけでなく、もっと学びにおける大切なものがあるのでは?
学びの大きな変化は既に多くの人たちが、学校、職場における教育形態の変化を肌で感じているのではないだろうか。
先日行われたワールドエコノミックフォーラムでの議論の一つが、このコロナ禍における学びの変化である。
https://www.weforum.org/agenda/2020/04/coronavirus-education-global-covid19-online-digital-learning/
そこでの主張をまとめると、
① 今後の学び方は、これを機会にして不可逆的な変化をする。
(すなわち以前のような学び方には戻らない。)
② テクノロジーが対面教育にとって変わっていく。
③ 教育に不利な条件に置かれた人たちが取り残されてはいけない。
アメリカでは、パンデミック以前5660万人の子供たちのうち約170万人しかホームスクーリングが実現できていなかった。それがこれを機に大きく改善され始めている。
この記事の中で、OECD教育管理のスキル局長である、アンドレア・シュライヒャー氏は、今後の教師の役割について以下のように述べている。
「調理済みのハンバーガーを温め直すことだけを求められている人たちが、マスターシェフになれる可能性はほとんどありません。」
これは、今までの教育プログラムをただオンラインに変えただけで、満足している状態を示している。
「教育に対する現在の規範的アプローチを単にこのまま続けていては、この危機を耐え抜くことはできません。この危機において、教師は、彼らの授業を他の媒体で再現するだけでなく、学ぶ内容、方法、場所、時間に関して全く新しい対応の導入を求めています。」
全く新しい対応の導入、それは何であり、どうやればできるのだろうか?
そして、シュラーヒャー氏は、最後にこのように結んでいる。
「テクノロジーは教え方や学習方法を変えるだけでなく、教師の役割を、学んだ知識を分け与える役割から知識を共につくっていく役割へと、高めることもできるのです。」
いわゆるラーニングファシリテータとしての役割である。それを、オンラインでもできるスキルを持つ、オンラインラーニングファシリテータともいえるだろう。このスキルが早急に求められているが、OECDの調査(TALIS)では、日本の教師が教育に関するテクノロジー対応が弱いことを示している。
多くの学校や企業は、目の前に差し迫った人材育成、教育プログラムをオンライン化して、何とかできた、できつつあると一息ついたばかりの状態かもしれない。でもそれだけでは、上記のように電子レンジでチーンと調理しただけである。大切なことは、本質的な学びの改革をこの機をとらえてスタートとすることだと思う。それでなければ、来年もそして5年後も、ずっと電子レンジで調理しつづけて、本来の料理の本質にたどり着けずに、インスタントの冷凍食品を食べ続けるだけの教育で終わってしまうだろう。
歴史的な変革のこのときこそ、共に学びと人材育成の改革に取り組むべきである。
そのような動きを今始めることが、企業価値の創造にむけ、学びの未来を拓く第一歩につながると私は確信している。
浦山 昌志
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