パフォーマンスを向上させる「フィードバック」とは?

本日はATDのブログから6月7日のMirjam Neelen氏、Paul A. Kirschne氏による
「パフォーマンスを向上させるためのフィードバック」についての記事をご紹介させていただきます。

https://www.td.org/Publications/Blogs/Science-of-Learning-Blog/2017/06/How-to-Use-Peer-Feedback-to-Enhance-Performance

フィードバックの重要性

職場において、「フィードバック」が重要であることは誰もが知っていることだと思います。

Patricia Harms と Deborah Roebuck による 2010 年の研究『study on feedback』では、フィードバックが職場のパフォーマンスを高めるツールとして「最も重要」であることが述べられています。 しかし、フィードバックを効果的に使うにはどうしたらいいのでしょう?

職場では 「360 度フィードバック」がよく知られています。

しかし、「360度フィードバック」はその本来の目的である「学習をサポートしパフォーマンスを高める」ことには必ずしも役立っていません。 これには、いくつかの理由があります。

第一に、これは通常、パフォーマンスマネジメントプロセスの一環として行われており(総括的・定量的に人を評価する)、本来の目的から逸れてしまっているからです。また、正確で意味のあるフィードバックを提供できる評価者のタイプや量、回答の選択肢、価値観・規範・信念といった文化的影響など、多くの問題があります。

第二に、360 度フィードバックは通常、正式なパフォーマンスレビューのために年に 1~2 回しか行われていないからです。

従業員がパフォーマンスを向上させる機会を与えるには、従業員を審査するのではなく、その能力を高めるため、実際の行動に移せる有意義なフィードバックを定期的に受けることができるようなプロセスを用意する必要があります。

フィードバックがなければ従業員は、「そのままにすべきこと」、「変えるべきこと」や、その理由をどうやって知ることができるというのでしょう?

フィードバックのプロセスだけでは十分ではありません。 人の行動に影響を与え、学習や改善を促進するには、フィードバックが正しく行われる必要があります。 しかし、この場合の「正しい」とはどのようなことを意味するでしょうか?

 

フィードバックモデル

John Hattie およびHelen Timperley による「フィードバックモデル」は、職場で効果的なピアフィードバックを行うことに関して、エビデンスに基づく指示として役立ちます。

下記の図は企業のコンテキストに沿ってフィードバックを構成し直したものです。これは、この問題を探求するためのよいサポートツールになり得ます。

このモデルの「1」から明らかになるのは、
フィードバックが特定の目的に向けられたものである必要があることです。

頼まれてもいない人に対してピアフィードバックを与えるときには、なぜそのフィードバックが重要なのかということや、その人にとって受け入れやすい形でフィードバックを与える方法を考える必要があります。 これは必ずしも頼まれてもいないフィードバックを不用意に与えても偶然の学習にはつながらないという意味ではなく、「それを効果的に行う方法を知る必要がある」ということです。

もう 1 つの重要なポイントは、フィードバックがゴールの部分に関連していることです。
だから、フィードバックを与える相手のゴールがコミュニケーションスキルを高めることであれば、プレゼンで使われている色がよくないことに関してフィードバックを与えることは差し控えたほうがいいでしょう。 相手が何を必要としているかをよく考え、自分の好みや意見に縛られないようにします。

図の「2」には、職場にはマネージャーと同僚という
2 つの主なフィードバック源があることが示されています。

この 2 つのフィードバック源に関して認識しておくべき重要なポイントがいくつかあります。

 第一に、マネージャーが個々人の能力向上を支援する場合、チーム・部門・組織などを改善することに関して利害関係があります。 たとえば、チームにとってよいことだったり、必要とされることが、必ずしも個々のメンバーにとって最善のことではない場合があります。 また、会社の同僚同士は、ある意味、競争相手でもあります。だから、他の人を助けることによって、その人が自分よりも昇給・昇進する可能性もあります。 ただし、同僚からのフィードバックが効果的に行われるようにすれば、同僚は、相互の学習やパフォーマンス向上において重要な役割を果たすことができます。

 

よりよいフィードバックを行うためには社内でのコミュニケーションが必要不可欠です。UMUの記事『社内研修で使えるコミュニケーションゲームとは?おすすめ3選を紹介』では社内研修などで使える「おすすめのコミュニケーションゲーム3選」を紹介。さらに、コミュニケーションゲームを用いるメリットや導入しやすいケースも併せて紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

3 つ目の「疑問」(図の「3」)は、それ単独では意味をなしません。
効果的なフィードバックとは結局、自分の現在の状態と、将来なりたい状態とのギャップを埋めることです。

だから、同僚のゴールが、より説得力のあるメッセージを発信することなのであれば、フィードバックを与える人は、そのゴールを意識する必要があります。その同僚が特定のコンテキストや状況でどのように行動しているかに的を絞ったフィードバックを与え(プロジェクトの成果に関するプレゼン、セールストークなど)、それを改善するためのヒントを与える必要があります。

 図の 3 つの疑問のうち、後の 2 つは、フィードバックの方向性(図の 4)示しています。

タスクレベルでは、同僚の伝えるメッセージの特定の部分が正しくないことや、その理由を伝えることができます。 このタイプのフィードバックは、特にプロセスや自己調整に関するフィードバックを与えるときの基盤として強力です。
なぜそれが間違っているのか、正しく行うにはどうすればいいかを同僚に理解させることが重要です。

もう 1 つの非常に効果的なタイプのフィードバックに、
知識に関する示唆的なフィードバック(epistemic and suggestive feedback)があります。

このタイプのフィードバックには、提言と質問が含まれます。 タスクレベルでは、同僚に対して「なぜそのようにしたのですか?」、「聞き手に対して、他にどのような情報を与えることができたはずでしょうか?」などと尋ねることができます。

プロセスに関するピアフィードバックを与える場合、

修正を促すようなフィードバックは、
「詳細な説明に入る前に、全体像を示す必要があります。そのようにしなければ、聞いている人が全体的なメッセージを理解できません」のようになります。

知識に関するフィードバック(epistemic feedback)の場合、
これは「聞き手が自分のメッセージを理解できなかったことに関して、なぜそのように思うのですか?」といった質問になります。

 

フィードバックをする上でコミュニケーションはチームや部署内での人間関係を円滑にするだけでなく、業務をスムーズに進めるためにも重要な役割を果たします。UMUの記事『コミュニケーション研修の目的とは?研修に取り入れたいゲーム3選』では、コミュニケーション研修はどんな目的で行うのか、またどのような内容にすればいいのかを詳しく解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

自己調整レベル(ゴールに向かって努力を続ける能力)に注目する場合、

たとえば、詳細を説明することはうまくできているけれども聞き手にとっては全体像が必要とされることを強調するなど、同僚が自分自身を評価するのに役立つようなフィードバックを与えます。 このタイプのフィードバックには多数の要因がからむので、非常に複雑です。 たとえば、このタイプのフィードバックを効果的に使うには、フィードバックを受ける人に自己評価能力が必要です。また、フィードバックを積極的に求めてそれに対処し、支援を求める能力が必要とされます。

つまり、フィードバックを受ける人に、自己評価を行い、それに基づいて改善する能力(自己調整学習スキル)が必要とされます。 これは、自分の学習プロセスをモニタリングし、それをコントロールするスキルです。 ただし、2013 年に Annual Review ofPsychology に掲載された研究によると、「学習・記憶・メタ認知プロセスに関する研究では、人はしばしば自分がどのように学び記憶するかについて誤ったメンタルモデルを持っており、そのために自分自身の学習を正しく評価・管理することができないというエビデンスが得られている」とのことです。

自己調整による学習スキルを向上させる方法について多くの研究が行われていますが、これは今回のブログの範囲を超えています。 極端に単純化して言うと、そもそも自己調整を行うには、その分野に関してある程度の知識が必要とされるということです。 分野の知識が十分にあれば、知識に関する示唆的フィードバック(正しい質問をする)やふり返りが、こうしたスキルを高める上で重要な役割を果たすことができます。

最後に、フィードバックを「自己」に関連させることもできます。

たとえば、「とても聞きやすい声をしていますね」とか「緊張したようですね」といったフィードバックです。しかしこのタイプのフィードバックは多くの場合、パフォーマンスには関係ないので、個人の好みを表明しているだけになる危険もあります。

フィードバックを与えることはスキルであり、知識と練習の両方が必要とされます。 ここで示したようなモデルを使って職場のチームが日々の仕事にフィードバックを取り入れれば、 フィードバックの理由を理解した上で、同僚に与えるフィードバックを意識的に選ぶことができます。 フィードバックの与え手と受け手の間でフィードバックプロセスをふり返ったり話し合う機会を持てば、なおよいでしょう。

 

UMUラーニングプラットフォームの基本思想は「リアルタイムフィードバック」
気づいた時に。伝える必要があるタイミングで、いつでも・どこでも。
皆が効果的なフィードバックのお作法を学び、常に良質なフィードバックを相互に行うことで、フィードバックの本来の目的である「学習をサポートしパフォーマンスを高める」ことをテクノロジーが可能にします。

UMUの記事『「モバイル×動画×練習×フィードバック」ベクトン・ディッキンソン(BD)の学習文化の改革』では、研修のROIをどのように測るか?研修の効果をより高めるには、どうすれば良いか?のヒントを掴めるようLTENで発表された事例を紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

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