相撲ゲームで楽しみながら、
コンプライアンス関連の行動規範定着を図る

バイエル薬品株式会社 様 

2018年、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が発出されました。これをきっかけに、バイエル株式会社様は、親しみにくい様々なコンプライアンス関連の各種ガイドラインを楽しみながら社員に定着させる方法はないかと検討を開始。その試行錯誤の中からUMUの機能を活用した相撲トーナメントを発案。そのユニークな発想や社内を巻き込む力、実際の運用について、バイエル薬品株式会社信頼性保証本部コーポレートガバナンス/資材審査チームの伊藤和代さんと橋本聖美さんにお聞きしました。(2021年5月インタビュー)

 

企業情報

    

社名:バイエル薬品株式会社
本社所在地:大阪市北区梅田2-4-9ブリーゼタワー
設立年月日:1973年4月5日
ホームページ:https://www.pharma.bayer.jp/ja/

 

関連法規やガイドラインの学習を楽しく学べるようにしたい

―ガイドライン学習にゲーミフィケーションを使うといった発想がそもそもユニークです。

これまでも年に2回のコンプライアンスを学ぶ研修として全社一斉トレーニングやeラーニングシステムがありましたが、一方向の座学形式でした。この形式の継続だけでは、社員が具体的なイメージ持つまでに時間がかかる、もっとよい方法はないかと意識はしていました。

そこで、楽しみながら学習できる環境を作ったらどうか、と発想したのです。楽しく学べれば理解も早く、学習意欲も維持でき、知識の定着もするのではないかと。2018年に発出された「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の社内教育を検討した際に具体的な検討をしました。ガイドライン単体ではなく、製薬協プロモーションコード、医薬品適正広告基準、当社の自主規範など様々な関連法規など全体の見直し、ゲーミフィケーションを使ってみようとなりました。

 

―自社で教育ツールを開発する選択肢もあったと思いますが、UMUを使うことになった理由について教えてください。社内での導入はスムーズだったのですか。

知識の習得・定着・実践のトレーニングサークルを回していける仕組みが重要だと考えました。「楽しみながら複雑なコードを理解し、いつでもどこでもアクセス・簡単にルール確認ができる」要件を満たすためにはどうしたらよいか。

当初は教育ツールを自社で作りたいと思い、社内リソースを含めさまざまなツールを検討しました。UMUなら、動画や音声スライドもあり、簡単にコンテンツ作成が可能、ゲーミフィケーションを取り入れるカスタマイズもできそう。システムはできているから、ライセンスを購入するだけでいい。

また、MR*を対象とした製品教育でもすでにUMUを導入済みであったことも導入した理由のひとつです。社内では、改めて今回の活用について、関係部署に賛同協力してもらえるように働きかけました。
*MR(医薬情報担当者:以下MR)

 

ゲーミフィケーションで参加意欲を促進

―それにしても「相撲トーナメント」とは面白いですね。薬品会社のイメージからは思いもよらない豊かな発想力に驚きました。

メリハリをつけたいと考え、毎日あるスポーツではなく、季節性のあるスポーツにしたかったのです。そこで相撲を思いつきました。1年間ずっと走り続ける、ゲームをし続けるのは大変です。

学習期間が決まっていた方がモチベーションは上がるのではないかと予測しました。また、相撲は誰でも知っているスポーツですから、わかりやすい、参加しやすいのではないかと。チームで盛り上がるよう営業所対抗の対戦ゲームをしたかったので、各営業所を相撲部屋に見立てました。

最初の構想を固めるまでに3ヶ月くらいかかりました。UMUさんへ最初にお声がけしたのが2019年の12月。ぼんやり構想ができたのが2020年の春ごろ。本格的に考えたのが夏頃。そして、2020年の11月の秋場所からローンチとなりました。いい学習コースができれば、他社にも売り込みたい、そんな意気込みで取り組みました。

ローンチの際には、イントラネットに載せるだけではなく、プロモーションビデオ作成、ポスター作成だけではなく、社長からの告知もプランニングしました。参加率を上げるために様々な部署を巻き込みました。

 

―並々ならぬ熱意を感じます。「SUMOトーナメント」の具体的なコンテンツ内容を教えてください。

いきなりゲームをするのではなく、これまでも開催している年2回の座学を受けた後に参加します。トーナメント画面に行くと、4つのコーナー「番付(成績表)」「はっきょーい!のこった!=ゲーム開始=」「図書館」「SUMOトーナメントルールブック」があります。

トーナメント開催期間中は、一日につき3問のクイズが掲載されます。参加者は、ゲーム開始コーナーでクイズに答え、解答すると関連するガイドラインの内容とともに解説を読むことができます。クイズ問題は、UMUのクイズフォームを使って作成しました。

 

<キャプション:UMU上のSUMOトーナメント トップページ>

 

番付で、重視したのは、いかにチームとしてまとまっているか。欠場があればマイナスポイントにするなど、団体戦として意識してもらえるようにしました。部屋割りを作ったのもそのためです。クイズに取り組んでいる間は、上位チームの成績を相撲中継として頻回に配信しました。

そうすると、クイズには参加していないものの、自分が所属している部屋の成績を見に行っている人が多いことがわかりました。下位だった営業所が最後には優勝するといったドラマティックな展開も。優勝したチームにはインタビューを実施してイントラで配信しました。

主な仕掛けポイントは3つ。可能な限り相撲とリンクさせ興味を持たせること。例えば、営業所を相撲部屋、所長を親方、順位を番付等です。2番目の工夫点は、クイズは極力テキストを控え、画像や事例ベースで出題してイメージを作りやすくしました。3つ目のポイントは、部屋ごとの対決とし、競争心やモチベーションを喚起しました。実は、上司から、ゲーミフィケーションに関する書籍を渡されたので、猛烈に勉強して、エンターテインメント性、承認欲求が必要だとわかり、その要素を取り入れたのです。

 

「また参加したい」が84%、事例紹介や解説に高評価

―ここまでユーザー視点に立った設計であれば、SUMOトーナメントは高評価だったのではないでしょうか

任意参加にもかかわらず、対象社員の51%が参加しました。アンケート回答率は50%、そのうち、「非常に楽しかった(17%)」「楽しかった(35%)」「普通(48%)」でした。

もともと「つまらない」と言われていた学習を52%の人が楽しいと感じてくれたことは、大きな成果だと感じています。さらに、「また参加したい」と回答した人は84%でした。

事例紹介や解説が多くあったことが高評価につながりました。具体的なコメントとしては「一日3問で取り組みやすかった」「わかっていたつもりだが、実際解答するとよくわかっていなかった事例に気づかされた」など。こちらが工夫した点がきちんと評価されていると実感しました。

製薬業界に広めて全体の底上げに貢献したい

―モチベーションアップの仕掛けが圧巻です。全体を振り返っての思いや今後の挑戦について教えてください。

少数精鋭で取り組んだ企画にもかかわらず、取組前にイメージしていたものはほぼ実現できました。UMUを使ったインタラクティブ性を構築できていなければ、資料をただ読んでいるだけとなり、実際に自分がその知識が必要な状態になった時に「どこにその情報があるんだろう・・」となっていたと思います。

今までにない学習ツールが確立できたといった達成感があります。優勝した営業所の営業所長は、「同じような企画があればぜひ参加したい」とコメントし、いまだにトップを走り続けています。営業所内では出張時などにMR間のショートメールでSUMOトレーニング進捗の確認やリモートの営業会議なども話題になっていました。日常に根付きつつあると実感しています。

医薬品という特殊な製品を扱っていることもあり、コンプライアンス・倫理行動は重要です。考え方だけではなく、行動として定着させる学習構築にいち早く取り組めたのは、私たちバイエルの企業文化ともいえます。

今後の挑戦としては、年2回のSUMOトーナメントを定着させるだけでなく、資材作成者用の学習コースの作成や常設の学習サイト構築を考えています。他の製薬会社でもコンプライアンスコード定着には同じ課題意識をもっていると推測できますから、他の会社への導入などで業界全体の底上げに貢献していきたいと思っています。

 

インタビューを終えて

バイエル薬品は、150年以上前にドイツで創業しアスピリンなどを世に送り出したグローバル企業、バイエルの日本法人。質実剛健のイメージでしたが、日本の伝統文化である相撲を用いて、ゲーミフィケーションの要素をふんだんに盛り込んだ学習プログラムの構築をしてしまうとは、正直驚きました。

難しくてとっつきにくいコンプライアンス、ガイドライン、コードを難なく料理して面白くする力は圧巻です。UMUの柔軟性が貢献できて光栄に感じました。新人教育や営業力向上といった分野だけではなく、コンプライアンス学習でもUMUが役立てることを私たちも発見しました。これからもバイエルさんのさまざまな発想に協力していきたいと思います。
写真、資料提供:バイエル薬品株式会社
(インタビュア:蔵本美菜子/編集・構成 石川慶子)

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