全200項目に及ぶコンテンツ提供や交流会で細やかなフォロー ~徹底した内定者視点でデザイン
(リクルート&キャリアクリエイトセンター 左:志鶴 友香さん 右:宮谷 将太さん)
パナソニック株式会社は2020年度の新人研修からUMUを導入。内定者フォローは、同社のリクルート&キャリアクリエイトセンターに所属する2019年新卒入社の志鶴 友香(しづる・ゆか)さんと2020年新卒入社の宮谷 将太(みやたに・しょうた)さんらが担当。同社の場合、内定者に近しい年代のお二人が組み立てた点が特徴です。豊富なコンテンツを生かしつつ、対面での交流会を小規模単位で実施するなどきめ細やかなフォローを行ったとのこと。どのような視点で組み立てたのか、志鶴さんと宮谷さんにお聞きしました。(2021年7月)
企業情報
社名 :パナソニック株式会社
本社所在地 :大阪府門真市大字門真1006番地
設立年月日 :1935年(昭和10年)12月15日
創業年月日 :1918年(大正7年)3月7日
ホームページ :https://www.panasonic.com/jp/home.html
つながりの構築とニーズに合った情報提供を軸に
―19年、20年入社組のお二人が組み立てたことにまずは驚愕しています。徹底した現場目線です。特に宮谷さんは、昨年コロナ禍での入社。ご自身の経験を反映しているのではないでしょうか。
宮谷さん:昨年、私自身がコロナ禍に入社し、新入社員研修を受けました。他社に新卒入社した友人に研修の話を聞くと、私はコロナ禍においてもインタラクティブ性のあるよい環境で受講できたのだと感じました。入社前に感じた先が見えない不安感はよく覚えており、自分が担当することになった内定者フォローでは、不安な気持ちを払しょくできるよう、内定者に寄り添っていこうと強く思っていました。
―コロナ禍で組み立てる内定者フォロー、さまざまなことに苦慮されたと思いますが、課題についてはどこに焦点を当てたのでしょうか。
宮谷さん:様々な課題が考えられましたが、特に2つの課題に焦点を当てました。1つ目の課題は「社員・同期との接点が不足すること」、2つ目の課題は「不安を払しょくする機会の不足」です。背景として、21年4月入社者の採用活動において、弊社は採用面接をすべてオンラインで実施することが確定していたことが挙げられます。オンライン化の結果として対話の機会が不足し、内定者と会社の双方に不安が残る就職・採用活動となっておりました。加えて、感染症の状況を踏まえると、内定後(20年10月以降)も従来形式の内定式や大規模な交流会実施は現実的でなく、内定者同士や社員との交流機会が限られることが予想されました。そこで、つながりの構築とニーズに合った情報提供が、今年度の内定者にとって必要不可欠と考えました。
―仮説を立てることは重要ですね。つながり感と不安払しょく。ここがポイントと狙いを定めた。仮説検証のためのアンケート調査もしたのでしょうか。
宮谷さん:はい。弊社内々定者へのアンケートと20卒他社新卒入社者へのヒアリングを実施しました。その中で、内定期間に求めることや知りたいことを調査し、仮説が確からしいと判断した上で、上記を内定者フォローの目的として設定いたしました。特に、対面機会の実施については複数回のアンケートを実施して慎重に意見を伺いました。
志鶴さん:昨年度の採用活動は説明会・面接・懇親会などがすべてオンライン化したため、他の内定者や社員とのつながりが希薄化すると考えられました。一方、19年卒と20年卒である私たち2人は内定者同士の交流機会や会社との定期的な接点が重要であると感じていました。
また、つながりの希薄化だけでなく、オンライン環境では対面に比べて個人的な内容を質問しづらく、個人的な不安を払しょくすることが難しくなっています。例年通りの一方的な情報発信のみでは、学生視点で知りたい情報を十分に提供できない可能性があると考えました。
そこで、交流機会や接点の創出などのつながり構築とニーズに合った情報提供、これらに注力する必要があると考えました。
交流会は地域ごとに少人数で対面実施
―交流会はオンライン上だけではなく、リアルの対面方式でも行ったのでしょうか。
志鶴さん:はい。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一部地域ではオンライン開催に変更しましたが、実施可能な地域ではコロナ対策を徹底した上で対面の交流会を実施しました。全国各地で「各回20人前後」「小規模開催」「酒類・軽食の提供無し」という制限を設けて実施し、内定者同士のつながり構築に主軸をおいた交流会を計26回実施することができました。
―26回とは大変な数ですね。リアルでの実施は内定者にとっては心強かっただろうと思います。内定者側や会社側で反対意見はありませんでしたか。
宮谷さん:高齢のご親族との同居などを理由に欠席する内定者もいましたが、反対意見はありませんでした。オンライン開催回を準備していたので、みなさんご自身に合った方法で参加できたことが理由だと思います。
また、国や会社の感染症対策ガイドラインに則って企画を行ったため、社内でも特に反対意見はありませんでした。
―今後ワクチンが普及していっても、引き続きオンラインで実施していく予定でしょうか。
宮谷さん:今後も昨年度と同様に、対面とオンラインの両輪で行っていきたいです。初対面での関係構築の観点では対面の方が望ましいと考えていますが、情報提供の観点では必要なときに必要な情報を得られるオンラインのメリットが大きいと考えているためです。
先輩社員インタビューやフィードバックの仕掛け
―不安払しょくに向けては具体的にはどのようなフォローを行いましたか。
志鶴さん:内定者視点で欲しい情報を欲しいタイミングで得られるように、UMUを活用した情報提供を行いました。工夫した点は、「網羅的な情報提供」「何度も足を運びたくなる場所にする」「インタラクティブな情報提供」の3点です。
1点目の「網羅的な情報提供」では、会社について理解を深めるコンテンツや内定期間の過ごし方など、全200項目に及ぶコンテンツを提供しました。また、多くのコンテンツの中から内定者が知りたい情報を見つけられるようにサイトマップを作成しました。
すべてのコンテンツを一度に配信するのではなく、内定者のその時々の状況を考慮しつつ、1か月に1~2回の頻度でコンテンツを追加していきました。
―全200項目のコンテンツとはすごい数ですね。この中に、ロールモデルを探すことができるコンテンツも用意されたのでしょうか。
志鶴さん:約80名の社員インタビュー記事が既存素材としてあったため、こちらをUMUに掲載しています。技術領域や職種などのハッシュタグを記事につけ、興味・関心領域に合わせて記事を探すことができるよう設計しました。
―既にインタビューコンテンツがあったのですね。先輩の苦労話や失敗談も盛り込まれているか、ちょっと気になるのですが、いかがでしょうか。
志鶴さん:はい。記事の大半は社員のキャリアについて触れておりますので、苦労話や体験談も含まれております。
―2点目の「何度も足を運びたくなるような場所にする」はどのように設計したのでしょうか。
志鶴さん:私たちはUMUを内定者教育ではなく内定者サポートの場と位置づけていたため、UMUのコンテンツ閲覧は必須ではございませんでした。そこで、内定者が自発的に足を運びたくなるような工夫をしました。具体的には、UMU上に志鶴・宮谷からのメッセージを毎日配信することと、コンテンツ追加時にUMU上で通知を送ることを半年間継続しました。
―毎日メッセージ配信とは、きめ細やかです。愛情を感じます。時期ごとにメインメッセージは組み立てたのでしょうか。
宮谷さん:はい。追加コンテンツと同様に、内定者のその時々の状況に合わせてメッセージを書いていました。具体的には10月は歓迎ムードを強く出したメッセージ、年末年始の研究や論文執筆が忙しい時期は労うようなメッセージ、入社間近の時期には具体的な研修や業務のイメージがつくようなメッセージを配信していました。
―3点目の「インタラクティブな情報提供」では、フィードバックの仕組みを盛り込んだのでしょうか。
宮谷さん:インタラクティブな情報提供を実現するため、入社に向けての疑問などを投稿できる目安箱を設置し、疑問への回答をひとつのコンテンツとして掲載・更新しました。それ以外にも身近で見つけた当社製品をシェアするコンテンツや、内定者同士の価値観に触れられるコンテンツなどを作成しました。
―「インタラクティブ性」は重要です。会社としては「これだけは知っておいてほしい」と知識提供型になってしまいがちですから。ご自身たちの体験に立脚しているように感じました。
志鶴さん:おっしゃる通りだと思います。しかし、私たちは直近で内定者フォローや新入社員研修を受けていたので、内定者視点を強く持って内定期間をデザインすることができたと思っています。
―オンライン上のアイスブレイクで、予想以上に効果的だったやり方はありますか。
宮谷さん:他己紹介が盛り上がりました。2人か3人ごとに分かれ、お互いのことを紹介するために5分間程度でたくさん質問して情報を引き出し、その後に他己紹介するというコンテンツです。相手のことを紹介するためには、相手のことをよく知るためにたくさん質問をするので、相互理解が進んでいる様子でした。受動的に聞く自己紹介より会話が弾み、取り組んでいる内定者も楽しんでいたようです。私が予想していた5倍以上盛り上がっていたのでとてもお勧めです。
―予想の5倍以上とは、嬉しいですね。今後もっと工夫していきたいことはありますか。
宮谷さん:5倍は完全に私の主観です。(笑)
昨年度のチャレンジにより、オンラインでもできること、オンラインだと難しいことが少しずつわかってきたと思っています。内定者にとって良い体験をデザインするため、目的に合わせてオンライン/オフラインを使い分けていきたいと思っています。
インタビューを終えて
入社1,2年目の方々が内定者フォローを実施し、徹底的に内定者視点に立って設計していることそのものが驚きでした。現場視点を大事にする企業文化を感じました。教育ではなくサポートであり、自由参加である、といった方針も繰り返し語っており、自由参加でも参加したくなるような雰囲気づくりを心掛け、メッセージ配信も時期合わせて内定者に負担をかけない配慮がありました。オンラインでの限界も最初から予測しており、対面での交流会を小規模単位で実施し、オンラインと対面のバランスがとれた設計となっています。内定者にとって良い内定期間のデザインを作ることを、UMUはこれからも支援していきたいと思います。
(担当:小仁 聡、木村麻鈴/編集:石川慶子)
志鶴さん、宮谷さんにご登壇いただいたセミナーのレポートを以下よりダウンロードいただけます。
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